貧乏くじを引いたプーチン
――わざわざ作らなくても良い敵を作ってしまった――
未だに、プーチン主導のロシアがウクライナに侵攻した意味が分りません。歴史的、地政学的、覇権主義的、陰謀論的等々、様々な視点からの説明がありますし、それぞれ、「納得」とまでは行かなくても、理解はできるのです。でも、胸にストンと落ちる感じは伝わってこないのです。
ヒトラーと同じカテゴリーの人間だと仮定すると、ウクライナに侵攻し多くの人を殺し、建物を破壊し、避難民を国外に追いやっているという「結果」が生じることは分るのですが、それでもプーチンという人物の描いている「ストーリー」が分らないのです。
ヒトラーの場合、『我が闘争』という大著を著すことで、自らのストーリーの説明をしています。ですから彼のストーリーは分ります。しかし、それが現実にはナチズムとして世界を破壊し、ユダヤ人はじめ多くの人々に言語に絶する苦しみを与えたストーリーを容認する訳には行かないことも強調しておかなくてはなりません。
同じように、プーチンのストーリーが分ったとしても、現在私たちが目にしているウクライナの惨状を作り出した罪が消える訳ではありません。そのことを断った上で、何故「ストーリー」が今になって気になるようになったのかというと、フィンランドがNATOへの参加を決めたからです。
ロシアとの国境が1300キロにも及び、1917年の独立以来ソ連との間で何度か戦争が起きています。特に第二次世界大戦中に、フィンランドはソ連に対抗するために、ナチス・ドイツに与してソ連との間で二度戦争をしており、独立は保ったものの、領土の一部をソ連に渡しています。
戦後は、ソ連そしてロシアとは敵対しない、しかし西側諸国とも仲良くするという政策で、軍事同盟であるNATOには加盟しないという中立政策を取ってきました。しかし、ウクライナが攻められ、NATOに加盟していないウクライナには、NATOが軍事介入しないことを目の当たりにして、NATO加盟を決めたようです。
ロシアとフィンランドの間の不安定ではあっても、平和的な関係の意味について、親友の一人であるフィンランド人のセッポから、事ある毎に聞かされてきていたのですが、ついにこの日がやってくるとは思いませんでした。
フィンランド国防軍のシンボル(Public domain)
軍事的な力として、フィンランド国防軍を甘く見てはいけないことは、冬戦争と呼ばれた第二次世界大戦中の両国間の戦争の歴史から明らかです。そのフィンランドをNATOに追いやって、作らなくても良い敵を作ってしまったロシアは、貧乏くじを引いてしまったのですが、それよりは「自業自得」と表現した方が真相に近いのかも知れません。
でも、こう考えるのは、「プーチン・ストーリー」の中に、フィンランドのNATO加盟という一章がないという前提があって可能なのです。もし、フィンランドはNATOに加盟するだろうと想定した上で、ウクライナに侵攻したのだとすると、とんでもないシナリオが待っているのかも知れません。
[2022/5/15 イライザ]
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