平和宣言で憲法を強調した理由
――松本記者の質問に答えて――

日本政府には人類的な役割を果す義務があることを示すため
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《非核三原則》
原水爆禁止世界大会広島大会の開会総会が終った後、毎日新聞大阪グループの松本美緒記者から質問を受けました。それは、私が市長を務めていた時代に、長崎では非核三原則の法制化等を強調していたのに対して、広島の平和宣言では憲法を強調していたという違いがあるが、その理由は何だったのか、ということでした。
大変良い質問だと思いましたが、立ち話で簡単に説明できるような内容ではありませんでしたので、改めてブログで簡単に説明をしておきます。
まず、非核三原則ですが、このブログで数日にわたって非核三原則と「唯一の戦争被爆国」そして「水平拡散」についての考察を行いました。そのまとめのような感じで、8日のブログを書いていますので、まずそちらを御覧下さい。[リンクを開くためには、まず右クリックをして、それから左クリックで開いてください。]
簡単に要約しておくと、「非核三原則」というのは、日本という国が「核兵器を持たない、作らない、そして持ち込ませない」という政策を採用するという原則です。法律にもなっていません。
そして、世界の100カ国以上の国々は、これと同じ内容を含む非核地帯条約を結んで、つまり法的な措置をきちんと取った上で「非核三原則」を実行している、という事実があるからです。
そのような現実を前にして、日本が「唯一の戦争被爆国」だと胸を張って公言するためには、核兵器廃絶運動の世界的なリーダーとして日本が大きな役割を果たさなくてはならないのです。言葉だけで「唯一の戦争被爆国」を標榜するのでは世界の笑いものになってしまいます。
《核廃絶運動のリーダーになれ――憲法の要請》
「唯一の戦争被爆国」としての日本政府の役割は、核廃絶運動のリーダーになることです。核兵器廃絶のための世界的運動(その中には、市民運動もありますし国レベルの運動も含まれます)のリーダーとして世界を引っ張るのであれば、世界は日本政府に付いて来るはずです。
平和宣言の中では、そのための具体的な方法も提案しています。例えば、核不拡散条約を補完強化するために、「ヒロシマ・ナガサキ議定書」と私たちが名付けた文書を国連の第一委員会に提案して、それを推し進めるのもその一つです (2008年平和宣言)。
憲法との関わりを説明しておくと、こうした努力を日本政府がするということは、単なる政策上の選択ではない、という点を強調したかったのです。つまり、憲法が規定しているのは、日本政府が世界の国々と協力し合いながら、世界中の人々が公正と信義を重んじる世界を創り、その中で平和に暮せるようにすることです。そしてその努力をするのは憲法が日本政府に課している義務であることを指摘しているのです。
もう一つ大切なのは、当然、平和市長会議としても様々なな活動をしていますし、日本政府の活動と重なる部分も多くあります。しかしながら、日本社会の上下関係では、国の高級官僚たち、特に外務官僚たちが、たかが都市と同じレベルでの仕事をすることなど、とても受け入れ難い話になってしまいます。そうではなくて、これは都市が政府に物申すレベルの話ではなくて、国の礎石である日本国憲法が日本政府に課している義務なのだ、ということを示すことで、日本政府としても誇りを失わずに仕事ができる、という効果もあるのです。
憲法には、このように政府と主権者との間の関係もきちんと規定しているのですが、もう一つ大事なことを付け加えておきましょう。
国会議員時代からの懸念なのですが、憲法を蔑ろにする人たちは、特に憲法の前文を嫌っていました。最近になって、高市総理が新人議員の頃、発言した「おめでたい」という言葉が注目されていますが、それは彼女だけではなくて、多くの保守派の議員たちの考え方でもありました。それに対してきちんとした姿勢を示しておくことも、もう一つの目的でした。
《オーストリアの非核憲法と世界への波及》
このような考え方の全てが1999年、私が市長になる前からあったのではありません。就任した年にオランダのハーグで開かれた国際平和会議から学んだことが多かったのです。
会期は1999年5月11日から15日まで、「ハーグ平和アピール1999(世界市民平和会議)」が開催されました。1899年の第1回ハーグ国際平和会議から100周年を記念し、世界中から約1万人の市民やNGO、平和活動家が参加して、核兵器廃絶や軍縮、平和教育に向けた討議とアピールが行われたのです。
その時に、オーストリアが同年7月には採択予定の「非核オーストリアに関する連邦憲法(原子力の自由に関する連邦憲法)」があること、そして核兵器の排除だけでなく、国内での原発稼働や核物質の持ち込みを憲法レベルで禁止することを知りました。
コスタリカが憲法で軍隊を持たないことを規定しているのは有名ですが、その時点で調べてみると、フィリピンとかパラオなども憲法で核兵器を禁止していますし、その他の国々でも法律で核兵器を禁止している国があることが分りました。
そのような動きをさらに広げるために、2003年には平和市長会議が「2020ビジョン」を公表しました。都市の力で2020年までに核廃絶を実現する、その中間目標として2015年までの核兵器禁止条約の採択を掲げた行動計画です。
世界中の都市、とくにアメリカの都市の力強い協力・支援のお陰で、具体的な行動につなげることができ、結果として、2年遅れではありましたが、2017年には核兵器禁止条約が採択されました。その実現のために、ヒロシマは、平和市長会議とともに大きな役割を果しました。
次の目標は2035年までの核の先制不使用と2045年までの核廃絶です。
皆様にとって、今日一日が良き日になりますよう。
[2026/08/12 人間イライザ]
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