ヒロシマの心を世界に [春宵十話]

核のない平和な未来を創るために

原水禁世界大会が同時通訳学校だった ――これほど素晴らしい先生に恵まれて上手くならない訳がない――

原水禁世界大会が同時通訳学校だった

――これほど素晴らしい先生に恵まれて上手くならない訳がない――

まとめ役の吉田嘉清さん

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 順序が逆転してしまいました。私が通訳としてどんな勉強をしたのかから始めるべきでした。当然のことですが、通訳・同時通訳は生れ付きの才能ではありません。教えて貰わないと見に付かないのです。私の場合、1961年の夏、第7回原水爆禁止世界大会 の通訳として雇われたときから訓練が始まりました。大学の学生課掲示板にアルバイト募集の張り紙があって、試験を受けた結果です。

まだ、同時通訳などあまり知られていない時代でしたが、世界中の代表が集まる国際会議で同時通訳を使う意味を理解し、このシステムを採用 した運動のリーダーたちの先見性は特筆に値すると今でも感心しています。そのリーダーの一人が吉田嘉清さんでした。事務 局のボスとして、私たち通訳や国際庶務などの若者たちを指導、統括、激励してくれました。

 若者と言っても、大学に入ったばかりの私から見ると、他の通訳の皆さんは、はるかに 遠い存在の皆さんばかりでした。その後も知的分野でのリーダーとして学問、マスコミ、 市民運動等の分野で活躍された方々に、同時通訳の手ほどきを受けることができたのは、 幸運としか言いようがありません。

これら先輩通訳の方々には、同時通訳だけではなく政治や文化そして原水禁運動のあり 方等について教えて頂きました。思い付くままにここにお名前を記させて頂きますが、1961年には既に引退した方も含めてのリストです。記憶違いがあればお許し下さい。錚々たるメン バーです。

以下、敬称を略して、國弘正雄(日本テレビキャスター、参議院議員)、小松達也(サイマルインターナショナル)、浅野輔(TBSキャスター)、福井治弘(カリ フォルニア大学教授・広島市立大学平和研究所所長)、海老坂武(一橋大学教授・フラン ス語)、酒井府(独協大学教授・ドイツ語)、藤枝澪子(福音館書店京都精華大学教授)、光延明洋(東京都立大学教授)、さらに事務局には吉川勇一、武藤一羊という顔ぶれを見ただけでも、これだけのユ ニークな才能をまとめるのが容易ではないことは御理解頂けるはずです。

吉田嘉清さんはその任に適していました。この内の一人だけが先生だったとしても生徒にとっては大きな試練になるのですが、これだけ大人数の厳しく優秀な先生方にしごかれる立場に置かれた者にとっては地獄です。アドバイ スは貰っても上達するのは至難の業です。そんな中、厳しく見守りつつも激励してくれた吉田さんや事務局の皆さんの温かさがなによりも有難たかったことを覚えています。

時がたち、アメリカの大学院に行くようになって自然に世界大会の通訳から離れて行く ことになりましたが、夏に帰国した時には出来るだけお手伝いもしました。まだ、生徒の一人であるという気分だったある年の大会のキー ・パーソンの一人がThe Bulletin of the Atomic Scientistsの編集長であるM I TのBernard Fe l d教授でした。彼が各地で講演した中で、何度か東京での通訳をさせて頂きました。

母校のMITという親近感もあったのですが、彼の話す内容は、私の中から自然に日本語に変わっていく感がありました。努力して理解し訳すという感覚ではなく、彼の口が動くとそれがそのまま私の口から日本語になって出てくるという感じだったのです。後に経験した広島修道大学でのシャーウィン教授の講演の時も同じ感覚でした。(最近の言葉で言うと「flow」という状態だったのです)

Feld教授の講演の一つは、福富先生の記憶とも重なりますが、これもサンケイホールでした。講演直後、吉田嘉清さんがわざわざ通訳ブースまで来てくれて、「完璧な通訳だった」と言ってくれました。ようやく、原水爆禁止世界大会からの「卒業」証書が頂けたと思った記憶 が鮮明に残っていましす。

時間の経つのは早いもので、その後も、核兵器廃絶運動の様々な場面で吉田さんにお会いしました。大変忙しい中でも、吉田さんが昔と同じように気配りをして下さりつつも、ちゃんと した仕事をしているのかを厳しくチェックして下さっていました。ということで、長い間、吉田学 校の生徒としての御指導を頂けたことに今でも心から感謝しています。(『平和運動家という生き方 吉田嘉清・米寿記念文集』2015年 から一部を引用しました。)

 

皆様にとって、きょう一日が素晴らしい24時間になりますよう!

[2025/9/24     人間イライザ]

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