アメリカを見ずに広島は語れない
――「パール・ハーバー」⇒原爆という「岩盤的」信念を守りたい人々――
アメリカの「岩盤的」信念を理解しないと分らないこともあります
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「原爆の責任議論は棚上げ」が、日本政府・外務省の、「原爆投下は合法」という考え方に沿うものであることはお分り頂けたと思いますが、まだ半信半疑の方々、そしてなぜ今なのか等、次の疑問をお持ちの方に参考にして頂きたいのは、いまアメリカで起きていることです。上のスライドには、その内の三つの事実を掲げました。
一つ目は、世界的に「空前のヒット」(東京新聞ディジタル版9月22日号の見出し)策としてもてはやされている映画「オッペンハイマー」です。この記事によると、興行収入は世界で9億1,200万ドルを超え、伝記映画では過去最高の興行成績だとのことです。
その点からだけもこの映画が、「原爆の父」として知られ、「アメリカの理論物理学を偉大にするために誰よりも大きな貢献をした」(*1)と、ノーベル賞受賞物理学者のH.ベーテが述べたようなオッペンハイマーのイメージを損ねるものでないことは明らかでしょう。
となると、原爆の製造と使用の正当性に否定的ではなかった多くのアメリカ人が、「原爆の父」であるオッペンハイマーを改めて思い起こすことが、原爆の投下は間違いだったと考える切っ掛けにはなり難いと考えるのが自然でしょう。それどころか、原爆投下は正しかったという考え方を補強する好材料にはなると考えても問題はなさそうです。
そんな目的のためにこの映画が作られたという積りは全くありませんが、例えば、2015年のYouGovという世論調査会社の調査では、46%ものアメリカ人が原爆投下は正しかったと回答しています。
ここで、「もの」に下線を付けましたが、それは、9月9日の、9条連近畿地域連絡会主催の講演会で質問された方の意図を反映しています。「被爆者の体験を聴いたり、資料館を見学すれば原爆が如何に残酷で、非人間的なものだということは誰にも否定できないはずなのに、何故、半分ものアメリカ人が原爆投下は正しかったと信じられるのでしょうか?」というものでした。
その通りなのですが、アメリカでは1945年の秋の世論調査では85%とか90%もの人が原爆投下は正しいと考えていたのですから、そこを出発点にすると、その数字が半分以下になったという事実は、大変に憂うべきことだと受け止める人々がまだ多く残っていても不思議ではないのです。
その傾向を押し止めるために、この映画が作られたとは言えないでしょうが、結果としてこの映画が少しはその役割を果していると考えられることは否定できないでしょう。
それは、20世紀後半のアメリカという国家の依って立つ、「勧善懲悪」観を守ることに他なりません。その価値観は未だにアメリカ社会の「岩盤」として残っています。つまり、「パール・ハーバー」という「絶対悪」を、「善」の代名詞であるアメリカが原爆によって破ることで、世界の秩序を守ったというシリオです。加えて、ナチス・ドイツまで懲らしめたのですから、アメリカ社会にとって第二次世界大戦は「Good War」なのです。
広島の平和公園と、パール・ハーバー国立公園の姉妹公園協定は、「Good War」を信奉する「岩盤的」信念の持ち主たちから見れば、このシナリオの確認だとしてもおかしくはありません。
終戦時、そして終戦後の日本側は、天皇制を維持するため、また昭和天皇を東京裁判の被告にしないために、このシナリオを受け入れた、さらにそれが今でも生きているというのが、矢部宏治著『日本は何故「基地」と「原発」を止められないのか』(2014年、集英社)の解釈です。
となると、これで全てがつながることになります。
しかしそれなら、「棚上げ」ではなく、「原爆投下は合法」を強く打ち出した方が分り易いはずなのですが、これにも理由がありそうです。それは、次回、考えたいと思います。
(*) 藤永茂著『ロバート・オッペンハイマー 愚者としての科学者』(1996年、朝日新聞社。2021年、筑摩学芸文庫)の後者438ページから引用。
最後に皆さんにとって、今日一日が素晴らしい24時間でありますよう!
[2023/9/25 人間イライザ]
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