イラン問題を解決して核不拡散条約(NPT)を救う
――NPTの強化を日本が訴えれば良い――

アイデア提案者のジョナサン・グラノフ氏と筆者@ニューヨーク
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世界中に難問が山積している中、その全てを解決するのはなかなか難しいのですが、重要ないくつかを解決した上に、日本という国が国際的に新たな役割を果たす機会が今、目の前にあります。
それは私が永年尊敬する友人であるジョナソン・グラノフ氏のアイディアを日本政府が採用して、NPTの再検討会議で提案することで始まります。
提案内容は簡単明快です。まずそれを掲げておきましょう。
《解決策は非核保有国が強制査察を受け入れること》
抽象的にはNP Tを強化することになりますが、具体的にはNP Tの三本の柱の内の最後、平和利用をする際に、どの国もIAEAによる強制的な査察を受け入れることを明文化し、イランも含めたすべての国がそれを遵守するということです。
論理的に考えればこのアイデアの素晴らしさは直ぐ分るのですが、念のため、世界の国々がそれを受け入れるための前提と、そしてこの提案の背景を考えてみたいと思います。
今、アメリカがイランに突きつけている条件は、核兵器の核武装を絶対にしないという約束です。しかしながら、それは既にNP Tの条文で禁止されています。イランもその条約の批准国ですので、この点は守らなくてはなりません。何もイランだけに、「核武装しない」とアメリカが宣言させる必要のないことなのです。
もし、アメリカがどうしてもと言うのなら、NPTには入っていないイスラエルが核兵器を保有していて、アメリカとともにイランを攻撃した事実も考慮しなくてはなりません。こんな状況でイランに「Yes」と言わせる方が無理ではありませんか。
NPTという国際条約を無視しているイスラエルの言い分を盾にイランに譲歩を迫るのではなく、NPTを守ろう、イスラエルもNPTを批准しよう、という方向性を打ち出すのが、「NPTの守護者」を自任する日本政府のとるべき態度ではないでしょうか。その立場から、イラン問題を再考しましょう。
問題は、イランが「核武装しない」と宣言するかどうかではなく、仮にNPT違反を行って、核武装の方向に向った時に、その違反行為を止めさせるメカニズムを作ることです。核武装につながるような核分裂物質の高濃度濃縮が行えないようにすることです。
イラン側は何年とかという期限を付けたいようですが、元々のNPTの考え方では、これは永久に行う必要があります。問題は期間ではなく、イランにだけ特別なことをしろと要求している「差別性」です。
そこで、NPTを強化して、どの国も核の平和利用に際しては、核武装に進んでいるという「疑い」がある場合には、公平な国際機関、IAEAがその国に入って査察を行うことにすれば良いのです。これをイランだけではなくどの国も受け入れれば、NPT本来の目的が達成され、各例核武装をする危険も取り除かれるではありませんか。
《強制査察には前例がある》
そして、このような「強制査察」は既に他の分野で実現されています。化学兵器禁止条約では、化学兵器の開発についてのこのような査察の項目が入っています。それを核の平和利用にも適用すれば良いだけの話なのです。
非核保有国だけに厳しい査察を受け入れさせるという条件は不公平ですので、核保有国もNPT第二の柱の核軍縮を進めることが必要です。それは核兵器禁止条約について署名と批准のための検討を始めることです。
アメリカにしても、自分たちは何もせずに、各の平和利用に関してだけは、非核保有国がNTTの条文を守ると言う姿勢を貫く通すのは虫が良すぎます。ですから、この際、核保有国だけでなく、NPTに加盟していない国々にも加盟を呼び掛け、核兵器についての世界状況を「軍縮」の方向に大きく変えてゆく努力を始めるべきなのです。
こう考えてくると、このアイディアの素晴らしいところは、既に条約として存在するNP Tをほんの少しだけ強化すれば良いという話だという点です。そして核保有国・非核保有国ともにこの条約で約束していることをきちんと守るという方向では、双方が主張していることを取り入れている訳ですから、これ以外の選択肢はないという論理性も大切です。
《NPTの守護者としての日本》
そこで日本の出番について改めて振り返りましょう。二年前の核不拡散条約再検討会議に出席した当時の岸田総理大臣は、「核兵器のない世界に向けての (中略) 原点がNPT」と定義した上で、「NPTの守護者として、NPTをしっかりと守り抜いてまいります。」とまで言っています。
守護者であるのなら、今回の再検討会議の中で、最終文章を採択するだけではなく、NPT自身を再生させるという役割、それがまさに核保有国と非核保有国との間の橋渡しをすると、日本政府が言い続けてきていることそのものなのですが、日本政府がこれまで言ってきたことをそのまま実行するだけで済む話なのです。
そしてもう一つ大切なことは、トランプ政権が揺す振りを掛けたせいで、例えばNATOが存続できるかどうかという深刻な不安まで引き起こしています。自前の核兵器を持つ、つまり核武装しようと考える国々が増えてきて、NPTの目指している核不拡散とは正反対の方向、「水平拡散」が起きてしまう可能性が高くなるいう危険な水域に、世界は入ってきています。その海域から世界を平和な方向に導き出すための役割を日本が果たせる機会です。そのことによって、日本が世界の平和のリーダーとして、新たな尊敬を勝ち取り、政治的な発言力を持つことになるという点も重要なのではないでしょうか。
こんな機会に恵まれるのは、国際的な政治の場で何度もあることではないでしょう。日本という国が今こそその真価を発揮すべきときなのではないでしょうか?
最後にこのアイデアの提唱者であるジョナサン・グラノフ氏のサイトへのリンクを張っておきます。
皆様にとって今日一日が、良き日になることをお祈り致します。
[2026/5/12 人間イライザ]
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