思春期女子への影響が大きいのは
――ソーシャル・メディアが増幅する威信模倣と完璧主義――

英語ですが、分り易い解説です
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このブログでは、シリーズとしてスマホとソーシャル・メディアが子どもたちに大きな害毒になっていることに焦点を合わせています。(リンクは右クリックをして新しいタブを開いて下さい。)
オーストラリアでは、16歳未満の子どもにはソーシャル・メディアを禁止しました。その背景の説明でもあります。
昨年来、この点について世界的に警鐘を鳴らしてきたJonathan Haidt (ジョナサン・ハイト)著の『不安に取り付かれた世代』 (「不安」と略) から抜粋・要約しながら、考察を進めて行きましょう。
今回はこの傾向がなぜ子どもたち、特に思春期と呼ばれる時期の女の子の精神状態に顕著なのかを取り上げます。心の問題ですので心理学の学術用語は避けられないのですが、日本語は分り難いので、ことによると少しは分る英語の方も援用して説明を続けます。
ここに再掲したのは、12月6日のブログで見ていただいたグラフですが、2009年から2015年までの間、自傷行為で緊急外来の治療を受けた女の子の数は約2倍に増えています。

そしてイギリスの統計では、ソーシャル・メディアを使う時間の長い女子の鬱病に罹る割合は、全く使わない女子の10%に比べて40%にも増えています。

こういった心の問題について、特に女子の方が多大な負の影響を受けているのは何故なのでしょうか?
1つには、人間誰でも承認欲求と呼ばれている性質を持っています。人から認められたい評価されたい尊敬されたいという欲求のことです。この欲求については男女間で差のあることも知られています。男性は自分の挙げた成果や自分の能力を認められることに重きを置く傾向があるようです。そして女性の場合には、関係性や共感という文脈での「承認」がより大きな意味を持つようです。賞賛獲得欲求とも呼ばれています。
ここで女性に特化すると、容姿とかスタイル身のこなし等の外形的要素が大きく関わってきます。このような面が社会的に重んじられていることの反映として、女性の場合はこうした外形的な面で認められることが心理的にも重要になるのだそうです。当然、自分自身の価値基準においても重要な位置を占めることになるのです。
一言お断りしておきますが、ここで論じているのは外形的要素に重きを置くことの是非ではありません。容姿やスタイル等を重んじるのはけしからん、そんなことを考えるのは間違っている等の、つまり「正しい、正しくない」、「あるべき、あってはいけない」等とは関係なく、現実社会ではこのような価値を元に物事が動いていますという現実の確認をしている積りです。
さてここでもう二つ、大切な枠組みがあります。一つは、威信模倣(Prestige bias)です。
Googleによる検索で出てくる定義は「社会学や文化進化論において用いられる概念で、人々が高い地位や評判(威信)を持つ人物の行動、習慣、意見などを模倣する現象を指します。」です。
そしてもう一つは現代という時代には、完璧主義が社会的な価値の中で大きな要素担っているという事実です。
学校の成績もそうですし、容姿や性格についてまで完璧に近い期待に応えなくてはならないという社会的なプレッシャーがあり、特に親や学校からのプレッシャーとして際立っているのです。
この完璧主義と威信模倣が共に働くと、他の人との比較、特に「威信」を持つ人との比較という形での大きなプレッシャーになることは、論理的帰結として理解できます。
そこに現れたのがソーシャル・メディア、特にInstagramです。Instagramでは自分の友達、あるいは全く知らないモデルとか女優あるいはインフルエンサーといった人たちが完璧な容姿やスタイルの写真を上げていますし、そこに添えられている言葉も完璧に近い形での生活を示しています。まさに「威信」の塊です。
現実には写真は編集できますし、そしてソーシャル・メディアに投稿される写真も言葉の多くは、綿密な企画や編集の結果です。100メートル走に例えれば、ウサイン・ボルトの記録が、インスタグラムには「日常茶飯事」の如くアップされている状態だと考えられるのです。それを目の前にして、それが自分の到達しなくてはならない目標だと心の中で思い詰める人が出てきてしまっているのです。
それに対抗する形で、(「対抗」できるかどうかとは別の力が働いて)、カメラに映っている自分自身の写真をアップすることになっているようです。
そんな到達不可能な目標が内面化された結果として、不安を感じたり、あるいは鬱になったり、とにかく精神的には追い込まれた状況になってしまってもおかしくはないということなのです。
さらに、「いいね」とか「コメント」「シェア」等をクリックすることがそれに重層的なプレッシャーを付け加えてしまっています。他の人から嫌われたくない悪く思われたくないとの内的要求から反応を続けてしまうことになり、その結構、プレッシャーがさらに大きくなるという循環が増幅されても不思議ではありません。
このような受け止め方で私には、思春期の女性たちの置かれている状況が理解できたように思っているのですが、如何でしょうか。この点については、もう一冊、参考になる書籍を紹介しておきます。『Anxious Generation: Empowering Teenage Girls to Overcome Anxiety 』 by Lila Mae Sterling です。Kindle版だと無料で読めます。
[Kinlde Unlimitedに登録する必要があります。月980円かかりますが、初月は無料ですので、登録して無料の本を読み終えたら、登録を取り消せば完全無料で読めます。ただし、登録して一冊読めば元が取れる本がワンさとありますので、「登録」はお薦めです。]
このシリーズは続きます。
皆様にとって、きょう一日が素晴らしい24時間になりますよう!
[2025/12/13 人間イライザ]
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