不安に取り付かれた世代
――スマホが子どもたちの脳内回路を支配している――

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日本政府は、生成AI利用を国策として採用するそうです。生成AIを使う国民が、先ずは5割、将来的には8割を目指す計画を立てたというではありませんか。そのための投資が1兆円。ディジタル貿易赤字の解消を図ることも計画の一部です。でも、お金よりもっと大切なのは私たち人間が人間であり続けることなのではないでしょうか。
政府の方針を知ってこんな感慨を催したのは、私の先生であるAIのパイオニアの一人、ジョセフ・ワイゼンバウムMIT教授の警告が身に浸みていたからです。この点については、2023年の4月以降、シリーズとして取り上げています。主なエントリーのURLリストを下に貼り付けましたので、御覧頂ければ幸いです。
- AI盲信に警鐘を鳴らしたMIT教授 ――ワイゼンバウムの『コンピュータ・パ
ワー』を読み直そう――
https://kokoro2025.hatenablog.jp/entry/2023/04/07/080000
2. ワイゼンバウム教授が受けたショック ――コンピュータが人間と同等かそれ以
上に扱われたこと――
https://kokoro2025.hatenablog.jp/entry/2023/04/08/080000
3. ワイゼンバウム教授が自らに課した責任 (No. 3) ――コンピュータにさせてはい
けない仕事のあることを確認しよう――
https://kokoro2025.hatenablog.jp/entry/2023/04/10/080000
4. ChatGPTの危険性について ――1960年代の代表的AIプログラム「イライザ」と比
べて――
https://kokoro2025.hatenablog.jp/entry/2023/04/11/080000
5. ChatGPTに国会答弁をさせてはならない ――機械にさせてはならないことがある
からだ――
https://kokoro2025.hatenablog.jp/entry/2023/04/12/080000
6. 『コンピュータ・パワー』の目次です ――「警鐘を鳴らす」意味――
https://kokoro2025.hatenablog.jp/entry/2023/04/13/080000
7. AIがベルギーの男性を死に追いやった? ――半世紀以上前のワイゼンバウム教授
の警告が生かされませんでした――
https://kokoro2025.hatenablog.jp/entry/2023/04/28/080000
8. 余りにも無防備過ぎます ――かつては煙草も無害だと信じられていました――
https://kokoro2025.hatenablog.jp/entry/2023/04/29/080000
残念なことに、こうした警告が十分に生かされることはありませんでした。今年4月にも若者がChatGPTに唆されて自らの命を絶ってしまいました。16歳のアダム・レインさんです。CNNの記事をお読み下さい。
ここで問題にしているのはAIなのですが、問題はもっと広い範囲を覆っているという警告が多くの識者から出されるようになってきています。一例は、2006年に13歳だったメーガン・マイヤーさんが、彼女のクラスメートのお母さんが偽の名前で作ったアカウントからの「サイバーいじめ」にあって、同じように自ら死を選んでしまっていたことです。もう20年近く前のことなのですが、「何故」という疑問の背景こそ、今という時代に生きる若者たちに大きな影響を与えているのです。
悲劇的な死の要因としては、スマホそのもの、スマホのコンテンツや、スマホが採用しているコミュニケーションの形、それを元に形成されるソーシャル・ネットワークの力等、スマホの存在が大きく影を落しています。そんな恐ろしい現実を詳細な調査・研究を元に私たちに届けてくれているのが、今私が読んでいる (実は聞いているのですが) 『The Anxious Generation』です。著者は社会心理学者として多くの研究や著作で知られているJonathan Haidt(ジョナサン・ハイト)です。
私はこの本を読んで、若い世代に起きている地滑り的な精神的な変化にあまりにも無知であることを痛感したのですが、多くの皆さんも同じくらいの認識をお持ちのはずです。その認識を修正するために、ハイトの力作中に、掲載されている多くのグラフの内、二つだけを御覧頂きたいのです。「Z世代」と呼ばれる、1996年頃から2012年ころまでに生まれたアメリカの世代が特に影響を受けているのですが、その世代に顕著に表れた精神的変化が分るはずです。

アメリカの10歳から14歳の間の思春期の子どもたちが、自傷による怪我 (死には至らなかったもの) で病院の救急外来の治療を受けた件数です。人口10万人当り何人かという数字ですが、Z世代が思春期になった、2010年から2015年くらいまでに急激に増加しています。しかも、男女の比較では、女子の方が二倍近くになっています。

こちらは、イギリスの統計ですが、臨床的に意味のある鬱状態にある10代の子どもたちのパーセントです。ソーシャル・メディアを使う時間数に従って、多くなればなるほど鬱状態の割合が増えています。イギリスの「Millennium Cohort Study」は、2000年から2002年に生まれた、約19000人を対象にした、様々な項目についての経年的研究です。この数字は2018年時点での10代 (13歳から19歳) が対象です。
これらのグラフからは読み取れませんが、大人たちはこれほど大きな影響を受けてはいないことにも留意しておく必要があります。
こうした傾向の背景にあるのは、私たち、特に子どもたちがどのような「技術」とともに生活してきているのかです。ラジオ、テレビ、コンピュータ、インターネット、携帯、スマホと変わってきた技術が私たち、特に子どもたちの生活だけではなく、心の中、脳の仲間で「支配」していることを前提に物事を考えないと、例えばグラフで示したような社会現象に対する有効な手立ては生まれてこないのです。
このZ世代の子どもたちが思春期を迎え、スマホに象徴される技術の雪崩に巻き込まれるようになった時期は、2009年が一つのピークを示しています。年表式に見て行きましょう。
2000年代初頭 ブロードバンドの導入――インターネット接続のための高速大容量の通信を可能にした。
2007年 iPhoneが登場――このデバイスを使っての「ソーシャル」なやり取りが指数関数的に盛んになる。
2009年 「いいね」と「リツイート(リポスト)」の追加――情報のやり取りというどちらかと言うと「実務的」な次元から、相手が自分をどう「評価」しているかという異次元的なやり取りに変化。
2010年 正面から自分の写真を撮れるカメラの導入――さらに「評価」の意味を大きくした。
2012年 Facebookがインスタグラムをリリース――多くの人に「承認される」ことが、ユーザーにとって最大級の意味を持つ環境が作られた。
以上、Z世代に何が起きているのかをざっと見てきましたが、長くなってしまいました。今回はこれくらいにして、次からハイトの著作をもう少し丁寧に読むことで、事の本質に近付いて行きましょう。勿論、これから何回か続きます。
皆様にとって、きょう一日が素晴らしい24時間になりますよう!
[2025/12/6 人間イライザ]
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