ヒロシマの心を世界に [春宵十話]

核のない平和な未来を創るために

相撲協会評議員会議長の思考 ――モンゴルは平和を大切にする国です――


相撲協会評議員会議長の思考

――モンゴルは平和を大切にする国です――

 

公益財団法人では、評議員会が法人の最高議決機関ですので、その議長はその法人の最高責任者と言って良いでしょう。理事会と理事長は業務執行の責任者です。ということから公益財団法人・日本相撲協会評議員会議長は、相撲協会の「意思決定」の最高責任者です。つまり、議長の言葉は相撲協会としての公式の考え方を示していると考えられます。

 

その池坊議長が『週刊文春』のインタビューで、白鵬の張り手やかち上げについて「理事会で取り上げるべきこと」という見解を示した上で、

 

「(モンゴル人は)狩猟民族だからね。勝ってもダメ押ししないと殺されちゃう。良い悪いは別にして、DNAかもしれないわ」

 

と述べています。張り手やかち上げについて、相撲協会としてのきちんとした対応を理事会で決めるべきだという点には賛成ですが、その理事会を指導する立場の評議員会として、その後のモンゴル人についての断定は頂けません。最低限、無知に基づいた決め付けは避けるべきでしょう。その視点からの問題提起です。

 

池坊議長の決め付けをまとめると、一つの国や民族の行動の原理原則は、DNA、つまり、その国や民族を構成する人々の生物学的特性によって動かし難く決まっているという前提があります。だから、その集団に属する個人の言動もそれに縛られている、という結論になります。

その延長線上で、「○○人種は劣っている」とか「××人種は他のどの人種より優れている」といった主張が歴史的には何度も現れてきました。ヒットラーがその典型です。池坊発言には、それほどの悪意も意図もなかったと信じていますが、DNAやモンゴルについての無知は指摘しておかなくてはなりません。

   

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By Forluvoft (File:DNA simple2.svg) [Public domain], via Wikimedia Commons

         
   

 その前に、相撲協会として自覚できなかった、それ以上に協会そのものに浸み付いてしまっているかのように見える「暴力容認」体質から目を逸らさせ、「暴力容認」は相撲協会や親方、そして各部屋の「伝統」とは無関係、という印象を作りだすことになっている点も問題です。

 

さて、DNAを問題にするのなら、これは科学的に検証可能な事柄なのですから、そちらの知見を活かさなくてはなりません。

 

モンゴルと言えばチンギス・カンや彼の孫のフビライ・ハーンが有名ですが、彼らとDNAとを合わせて考えると、次の事実が頭に浮びます。それは、世界の男性の中で、チンギス・カンDNAを受け継いでいる人の率が高い、そしてその人たちは日本にも住んでいる、という遺伝学者の主張です。だとすると、日本人の中にも狩猟民族の血が流れていることになるのですから、白鵬だけを特別視するのはおかしいということになります。

 

さらにある国の特徴を一言で表現する場合、「狩猟民族」か「農耕民族」かという、概念化や定義の難しい基準を使うのではなく、例えば選挙によって選ばれた政府が一国の政策としてどんな立場を取っているのか、それも国連という比較可能な場を通しどのような主張をしているのかを物差しにした方が信頼度は高いと思うのですが、如何でしょうか。

 

例えば、現在のモンゴルの外交政策で世界的に注目されているのは、一国で「非核兵器地帯」として国連に認定されている事実です。世界的に、南半球は全て非核兵器地帯条約を批准していますが、北半球では、中央アジアと東南アジア、そしてモンゴルだけです。一国だけではあっても、条約と同じ強制力を伴った形で核兵器反対の立場を明確にしている国、そしてそれを支持している国民や民族は、核兵器保有したり、核兵器を使うという前提で国際問題に対処している国より「非暴力的」かつ「平和的」だと言って良いのではないでしょうか。

 

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青の地域は、非核兵器地帯です

By Original uploader: JWB (File:BlankMap-World6.svg with recoloring.) [CC BY-SA 3.0 (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0)], via Wikimedia Commons

 

そして、モンゴルは、201777日に採択された核兵器禁止条約にも賛成票を投じています。御存知のように「唯一の被爆国」であることを標榜している日本は、これに反対しましたし、条約案をまとめるための努力に対する積極的な妨害もしてきました。

 

こうした結果だけを見て、非暴力支持のモンゴル、暴力を肯定する日本、と結論付けることも可能です。

 

もちろん、平和憲法の下に国際的な立ち振る舞いを規制してきた日本という国家が、平和国家だという主張も、(安倍政権でそれが崩れつつあることを差し引いても) 世界的にはまだ認められていると考えられます。

 

となると、平和憲法による評価では世界が一目置いていた日本を、核兵器禁止条約という画期的な出来事を通して眺めると、その影が薄れ、一国非核地帯を宣言したモンゴルの方が、非暴力・平和という分野では先んじていると見られているというまとめは、かなり正確な国際的評価の要約になります。

 

仮に、個人個人の行動が、一国の「社会」や「民族」の特性の結果であるという因果関係が存在すると仮定すれば、非暴力・平和というレベルではそれほど差がない、あるいはより非暴力的な国出身の力士が、土俵の上では、日本人力士より暴力的だという結論にはなりません。

 

ましてや、「狩猟民族」だからという「原因」によって、土俵の上での暴力的行動が生れる、という「因果関係」が存在するとの主張には無理があります。

 

最後に付け加えておくと、1990年代から、ジャック・ウエザーフォードという人類学者・歴史学者によって、各地に散逸していた多数のモンゴルの歴史文書の比較考量・読み解きが行われました。その結果、チンギス・カンについての多くの新事実が発見されています。例えば、女性の能力を高く買って、政治的にも高い立場に登用したことや、宗教の自由という概念もチンギス・カンが、自ら支配した地域に導入した法的な概念で、それが、アメリカにまで伝わって、トマス・ジェファソンの力でアメリカの憲法に取り入れられた、といった歴史です。

 

となると、モンゴルの歴史からは、寛容で多様性を尊重するという価値観を大切にしていた民族だ、と考えることも可能です。ジャック・ウエザーフォードの調査・研究の成果については稿を改めて御紹介します。

 

 

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コメント

最近の相撲協会をみると公益法人より指定暴力団の方が相応しいように思えます。

この方の考え方なら、家元制の中で生まれ育った人が、平等な立場で判断すべき評議会に所属するのは間違っているとなるでしょうね。
評議会にしても横綱審議会にしても、とても偏っているように感じます。
相撲協会は、税金対策のためだけの公益法人に見えます。
認可を取り消すべきですね。
国民から税金のように徴収されたNHKの受信料金が、放映料として使われているのですから、儲かったお金は税金として徴収し、社会に還元すべきです。

相撲協会NHKも国から様々の保護を受けているようですが、
もう限界ですね。
トランプさんはメデイアを目の敵にしていますが、
日本のメディアは権力とベッタリのようです。
いずれ新聞社は潰れ、
そのときには相撲協会も消えるのでしょうね。
それによって困る人は、そこに住んでいる人たちと自民党の議員だけでしょうね。

ハト派」様

コメント有り難う御座いました。

これだけ、暴力の歴史があるのですから、相撲界からは「全ての暴力追放」という目標が出てきても良さそうなものですが、そこには行き着かないですね。

そしてほかのスポーツでも隠すのではなく、表に出して「暴力追放」をすべきですね。

「やんじ」様

コメント有り難う御座いました。

評議員会というのは公益財団法人の最高議決機関です。それなのに、まるっきり当事者意識がない言動を繰り返しているのは問題ですね。もっとも、他の関係者も似たり寄ったりというところがもっと大きな問題かもしれません。

力士、特に若い人たち基本的人権を守るための組織が相撲協会の中には必要なのではないでしょうか。

「民営化」様

コメント有り難う御座いました。

そうなると良いのですが、ちょっと悲観的です。誰にも得にならないタバコ事業は続き、人類の未来を危うくする原発も政府が肩入れして続いています。NHK御用新聞も同じように続く可能性が高いとも考えられますが--。