石川教授の講演 ③ 今日的課題
――「権限」「正統性」「財政」によるコントロール――
東京大学法学部の石川健治教授による講演の最終部分です。4部の構成は次の通りです。
⓪ 導入 ①憲法論の構造 ②9条論の構造 ③今日的課題
9条をいじるということは、広島の世界的使命に密接に関わっている。それを、自衛隊のコントロールあるいは統制という面から考える。
それには三つの階層がある。「権限」「正統性」「財政」だ。改憲の場合、9条を変えることでどんな権限が国家に発生するのかを見極めておかなくてはならない。内閣の職務権限は73条に規定されているが、その中に軍事に関する権限はない。9条があるからだ。
しかし、憲法によって権限が与えられていてもその権限を行使するための「権原」、つまり法律的な根拠あるいは正統性が必要だ。例えば、81条に規定されている違憲審査権がある。それは一つの権限を定めているのだが、実際にその権限を使うための根拠が必要だ。国権の最高機関である国会が定めた法律に問題がある、と言うためにこの点が問題になる。そして、一皮むくと、やはり財源がなければ何もできないのだから、これも重要だ。
では軍事力の統制について見てみよう。9条の1項と2項が権限としての軍事力を否定してきた。しかし、自衛隊が作られたことで、2項は破られてしまった。それでも、正統性と財政が絡んで、「違憲」を避ける必要性が重く受け止められ、統制が行われた。例えば財務省が予算の抑制を行う際の議論として有効だった、という側面がある。自衛隊の創設で性質が変ったとしても、2項のあることで軍拡路線は抑えられた。70年間の成功の歴史と捉えて良いのではないか。そして災害救助隊としての自衛隊は愛されてきた。
2項が大きな役割を果してきたということなのだが、3項ができるとこの統制が外れる。つまり、uncontrollable、コントロールが効かない状態になってしまう。
この視点からは、「統制」が入っているという意味で自民党草案の方が少しはましだとさえ言えるが、そこまでは深く考えずにそうなっている。自民党草案で改憲することにも反対だか、統制を外す形での改憲はどうしても阻止しなくてはならない。
口当りは良いが本当に危険な提案がなされていることに気付いて欲しい。そしてその提案を阻止しなくてはならない。
時間がなくて、ネグった点が二つある。一つは、私たちが生きる意味をどう捉えるのかという点だ。憲法は、一つの物語としてその意味を示している。この視点から、広島の意味もある。
松元ヒロさんが憲法の前文を感動的に暗唱してくれたが、以前、憲法の集会で加藤剛さんの前座を務めたことがある。加藤さんも憲法前文を繊細に芸術的に読んでくれた。私たちの持つ夢の形見とでも言ったら良いのだろうか。そして憲法は、人類の物語のテキストであり、それなくして憲法は成り立たない。
憲法の持つこの側面を敵視して改憲しようとしている人たちもいるのだが、本気で関わっている人はこの点を無視しない。結局、本気度の強い少数の人たちが引っ張って、それほどでもない大勢の人たちを引き連れて法改正を行っているという事実も認識しておこう。
最後に日本の財政について一言。大変苦しくなっている。これまでのように積み上げ方式で予算が編成できないくらい財政は逼迫している。それは様々なところに波及しているが、結果として専制につながる。加計問題は根が深い。表面だけではなく、根の深い部分を見よう。
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