アメリカ社会は変ったのか(1)
大統領だけで未来が決るのではない
アメリカの大統領選挙でトランプ氏勝利の原因は奈辺にあったのか、またトランプ政権の今後にはどのような可能性があるのかについて考えてきましたが、焦点を合わせたのは次期大統領のトランプ氏でした。もちろん、強大な権力を持つのですからそれは当然なのですが、それと同時に、アメリカ社会自体の「今」そして今後に焦点を合わせて考えておくことも大切です。特に、日米の市民同士が連携して、核兵器の廃絶その他の課題に取り組んで行くことで新たな方向性を打ち出し、それに呼応して力を発揮してくれる政権を誕生させるためにも、シャープで冷静な分析が必要です。「アメリカ」という大きな器の話ですから、これまでの論考と重なる部分もありますが、「切り口」で違う姿が見えてくることを期待しています。
そのために、「ドナルド・トランプが大統領になる5つの理由を教えよう」の導入部で、マイケル・ムーア氏が「文化戦争」で左派が勝ったと断定できる根拠として挙げている7項目を、もう少し詳しく見て見たいと思います。
既に「本音と建前 アメリカと日本そして世界はどうなる?」でも、分析は試みていますが、もう少しデータを増やしたり丁寧に比較したりということでもう一度考え直したいと思っています。
さてムーア氏の言葉を要約すると、「文化戦争」で左派が勝ったと言えるのは、世論調査その他の指標で、ほとんどのアメリカ人がリベラルな姿勢を示しているからだと言って良いように思います。個別に挙げられていたのは7つの項目です。それらは、
① ゲイやレスビアンの結婚は合法
② 男女同一賃金
③ 人工中絶は合法
④ より強力な環境保護法が必要
⑤ 銃規制はもっと厳しく
⑥ マリワナを合法化
⑦ 社会主義者が22州で勝利
でした。第⑥は、カリフォルニア州の住民投票で実現されましたし、⑦は民主党の予備選挙での実績ですので、これはそのまま受け止めましょう。最初の五つを見てみましょう。
最初の、①ゲイやレスビアンの結婚は合法、については、次のグラフが示すようにアメリカの50州全てで合法化されました。それは2015年の最高裁判所の判決の結果です。
その背景として、同性間の結婚を合法化することに賛成する人が60パーセントいることが、ギャラップ世論調査の結果から分ります。しかし、37パーセントの人たちは、最高裁の判決があるにもかかわらず反対の意思表示をしています。社会が分断されていると感じるには十分な数だと考えられます。
次に、②男女同一賃金ですが、次のグラフを御覧下さい。
圧倒的多数の人が、男女同一賃金を支持しています。そして「企業が同一賃金を払うことを義務化すべき」という意見が多いことからは、「一般論」としては同一賃金賛成、しかし、払う側の抵抗が大きくて実現していないという現実が浮び上ります。
三つめの③人工中絶は合法、ですが、まずは一番上の線から、「どんな状況でも中絶は合法」「一定の条件を満たした場合には合法」「どのような場合にも非合法」という三つめの線まで、三つの選択肢の中から選んだ場合の結果です。ギャラップ社の調査です。
「どのような場合にも合法」と「一定の条件下で合法」を合わせると80パーセント近くの人が、中絶は合法だという考えの持ち主です。でも次のグラフも見て下さい。
「プロ・チョイス」つまり中絶賛成派なのか、あるいは「プロ・ライフ」つまり中絶反対なのか、と問われた場合にはほとんど差がありませんし、時間的にも大きな変動はありません。一見相反するように見える世論調査の結果をどう見るのかが大切です。
次は④より強力な環境保護法が必要、ですが、ギャラップ社の調査結果を御覧下さい。問は「環境保護が優先されるべき」「経済成長が優先されるべき」の二つのどちらを選ぶかです。直近の56対37という数字ですが、かつての71対19に比べると、かなりの後退です。
最後に⑤銃規制はもっと厳しく、です。ピュー・リサーチ・センターの調査結果です。
2000年には銃規制派が3分の2あったのに、最近では、銃規制反対派が過半数を占めるまでに勢いを増しているのです。
もう一つ、アメリカ社会を一つのグラフで表すとしたら、このグラフになる可能性も十分ある、所得格差を示すグラフです。赤は、高額所得のトップ10パーセントの人たちの所得、青は、大半の人が属するボトム90パーセントの人たちの所得です。
随分長くなりました。説明と分析は続編を御覧下さい。
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