「自民党総裁任期延長」の続きです
『数学教室』という面白くてためになる雑誌があります。主な読者そして書き手は算数や数学の先生です。算数や数学の楽しさをどう子どもたちに伝えているのか、またどんな風に子どもたちと一緒に楽しんでいるのか、現場からの報告や自分たちの工夫がまとめられています。教える内容は学年ごとに違いますので、内容も多岐にわたっています。効果的な教材の紹介も楽しく読めますし、教育論やエッセーも連載されていて、ちょっとした息抜きにもなります。
算数や数学の授業で教室が「ドッとわく」とか、「笑い転げる」という表現は想像がつかないかもしれません。でもこの雑誌を中心に活動を続けてきた先生方にはそれができるのです。
そんな素晴らしい実践をして来られた先生方に読んで頂いている『数学教室』、2012年4月号の「宣誓」を再録します。今回と次回二度に分けて、総理大臣も宣誓をすべきだという背景がテーマです。
唐突ですが、私はリンカーンのファンです。市長として目指す市政を「市民の市民による市民のための広島市政」と表現したくらいです。リンカーンの演説の中ではゲティスバーグの演説が一番好きですが、彼の第二次の就任演説が最も素晴らしいと評価する人も多くいます。
就任演説の前には、当然、宣誓式があります。これも、時代によって変化があり、宣誓式の前に就任演説をしていた時代もありました。この宣誓の言葉はアメリカの憲法で定められています。
I, <name>, do solemnly swear (or affirm) that I
will faithfully execute the Office of President of the United States, and will
to the best of my ability, preserve, protect and defend the Constitution of the
United States.
(訳)アメリカ合衆国の大統領という職務を忠実に執行し、私の能力が許す限りの最大の努力をして、合衆国憲法を維持し、擁護し、防衛することを厳粛に誓います。
個人的には奴隷制度に反対していたリンカーン大統領ですが、就任時には大統領として奴隷制度は維持する、しかし、アメリカ合衆国の分裂は避けるという方針を表明しました。それは、大統領の職務が憲法を維持し擁護し防衛することであり、奴隷制度が憲法で認められていたからです。
天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ
この違いに注目して頂きたいのですが、アメリカでは、大統領が就任するに当り、宣誓をしてまで、義務として課しているのが、憲法を「維持」し、それを保護あるいは擁護する――イメージとしては、母親が身体を覆って雨から子供を守るような感じ――そしてdefend とは、攻撃を加える敵に対して、こちらも力を使ったり闘ってでも守るイメージです。法律的には、それぞれ、意味のある言葉のはずですが、イメージとしてはかなり強烈な義務なのです。defendの訳として「防衛」という言葉を使ったのも、これほど強い意味があるのだという点を伝えたかったからです。
「憲法を守る」という一言で済ませても一見、問題はないように思える事柄なのですが、もう一つ大切なのは、「守る」の内容を、三つの言葉で言い直すことにより、その範囲をきちんと規定している点です。つまり、「守る」が包含する意味の範囲を一つの集合として、その全て、そしてその外にははみ出さないという視点からの言葉になっていることです。
アメリカ建国の父たちに集合論的直観があったのかどうかは分りませんが、少なくとも論理的な思考力はかなり高かったと言って良いのではないかと思います。
対して、日本国憲法の規定は優しい言葉です。尊重と擁護です。擁護が、英語のprotect に相当する言葉なのだと思いますが、この違いが政治全般に大きな影響を与えているような気がしています。
次回に続きます。
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