High School Sweetheart
(「好きな辞書」 その2)
「high school
sweetheart」とは、高校時代の恋人を意味します。英語で書いたのは、アメリカの高校での話だからです。
新学年が9月に始まるアメリカの高校に入ってから3か月から4か月の間、大体クリスマスの頃までなのですが、英語には苦労しました。でも、クリスマスを境に、ふと気が付くと英語で苦労した時があったという記憶さえ消えています。
それが物理的にも現れます。それまでの間、朝から晩までほとんど一日中、行動を共にしていた「恋人」を置き忘れてしまうのです。その「恋人」の写真です。
名前は「三省堂のジェム英和・和英辞典」ですが、本格志向で、上着つまり表紙は革です。
それだけではありません。履歴書を見て頂くとすぐに気付かれると思いますが、1959年、今から57年前の値段で500円です。物価の比較は難しいのですが、今の値段にすると3000円から5000円くらいはしたということなのです。大枚を叩いてまで買うことにしたのは、英語の語彙が少ないことは分っていたのと、同級生のお父さんが英語の先生で、そのお父さんからの勧めがあったからです。
ページ数は約560ページで、縦約10センチ、横約6センチの小さな辞書ですが、大活躍してくれました。分らない単語があると、友達にその単語を探して貰って日本語訳を見ることで、どんどん語彙は増えました。ふた月くらい経った時には学校の新聞に「小さな辞書に守られた留学生」という触れ込みで紹介されたほどでした。
もう一人、この辞書と切っても切れない友人がいます。フランクです。社会科のクラスで一緒だったのですが、分らないことが多くあっても授業を中断して貰って一つずつ聞く訳にも行きません。社会科のシーパーソン先生が、「誰か隣に座って、分らないことを小さな声で教えるボランティアをしないか」と声を掛けてくれた時に真っ先に手を挙げてくれたのが、彼だったのです。単語が分らないときには、この辞書を繰って何度も教えて貰いました。
彼とは、レスリングと陸上のチームでも一緒でしたし、タイピングの時間には彼のガール・フレンドだったゲールが隣の席になってくれて、そこでもいろいろ助けて貰いました。
今なら、電子辞書もあり、スマホで簡単に用が足りるのですが、その代償として、こんなに貴重な「high school sweetheart」に出会う機会も奪われてしまうことを考えると、「進歩」が全てではないことを改めて考えさせられます。
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